2022年9月9日、岸田文雄首相は、政府が開いた食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で食料・農業・農村基本法の見直しを指示しました。
岸田首相は「食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長を推進していくという方針のもと、農林水産政策を大きく転換していく」と述べました。
地球温暖化などの気候変動への対応やロシアのウクライナ侵攻が影響している生産資材や小麦の高騰など、大きく農業を取り巻く状況が変わりました。
しかし、農業政策の指針となる「食料・農業・農村基本法」は1999年に施行後一度も変更がありませんでした。そのため、これから1年程度かけて法律改正も視野に議論していくということでした。
では実際、農業政策の指針である食料・農業・農村基本法とどんなものなのでしょうか?
食料・農業・農村基本法について
基本法の名の通り、食料・農業・農村に関する施策について、基本理念と実現に必要な事を定めた法律です。1999年に施行されてから今まで変更はありませんでした。
同法は4章に分かれています。
第1章は食料安定供給や多面的機能の発揮、農業の持続的な発展など国民生活や経済の健全な発展に向けた「しなければならない」ことを示しています。
第2章は、1〜4節に分かれています。上記の「しなければならないこと」についてどのような施策を進めていくかについて明記されています。
第3章は関係団体は施策に向けて協力すること、第4章は農林水産省に、食料・農業・農村政策審議会を置くことが記されています。
第1章と第2章の詳細についてみていきます。
参考として目次を引用します。
法律第百六号(平一一・七・一六)
◎食料・農業・農村基本法
目次
第一章 総則(第一条―第十四条)
第二章 基本的施策
第一節 食料・農業・農村基本計画(第十五条)
第二節 食料の安定供給の確保に関する施策(第十六条―第二十条)
第三節 農業の持続的な発展に関する施策(第二十一条―第三十三条)
第四節 農村の振興に関する施策(第三十四条―第三十六条)
第三章 行政機関及び団体(第三十七条・第三十八条)
第四章 食料・農業・農村政策審議会(第三十九条―第四十三条)
附則
衆議院より https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/h145106.htm
一体どんなことが書かれているの?〜第1章〜
第一章で「しなくてはならないこと」について13項目が書かれています。
第一条はこの法律の目的についてです。以下、それぞれについて簡単にまとめました。
2条 | 食料の安定供給の確保 |
3条 | 多面的機能の発揮 |
4条 | 農業の持続的な発展 |
5条 | 農村の振興 |
6条 | 水産業及び林業への配慮 |
7条 | 国の責務 |
8条 | 地方公共団体の責務 |
9条 | 農業者等の努力 |
10条 | 事業者の努力 |
11条 | 農業者等の努力の支援 |
12条 | 消費者の役割 |
13条 | 法制上の措置等 |
14条 | 年次報告等 |
2条〜5条までが食料、農業や農村に関する施策についての基本理念となっています。
6条以降は、基本理念に則り、それぞれが実施する責務を有するという内容で構成しています。
第2章以降は、上記の課題についての施策についてまとめられています。
一体どんなことが書かれているの?〜第2章〜
第2章は、大きく4つに分かれており、そこから細分化されています。計29条となっています。
15条では「食料・農業・農村基本計画を定めなくてはならない」と定めています。16条以降については下記にまとめました。
16条 | 食料消費に関する施策の充実 |
17条 | 食品産業の健全な発展 |
18条 | 農産物の輸出入に関する措置 |
19条 | 不測時における食料安全保障 |
20条 | 国際協力の推進 |
21条 | 望ましい農業構造の確立 |
22条 | 専ら農業を営む者等による農業経営の展開 |
23条 | 農地の確保及び有効活用 |
24条 | 農業生産の基盤の整備 |
25条 | 人材の育成及び確保 |
26条 | 女性の参画の推進 |
27条 | 高齢農業者の活動の促進 |
28条 | 農業生産組織の活動の促進 |
29条 | 技術の開発及び普及 |
30条 | 農産物の価格の形成と経営の安定 |
31条 | 農業災害による損失の補てん |
32条 | 自然循環機能の維持増進 |
33条 | 農業資材の生産及び流通の合理化 |
34条 | 農村の総合的な振興 |
35条 | 中山間地域等の振興 |
36条 | 都市と農村の交流等 |
37条 | 行政組織の整備等 |
38条 | 団体の再編整備 |
さまざまな国の事業と照らし合わせていくと、これらにしたがって動いているような気がします。
例えば、台風被害などの災害への補てんなら31条、有機農業の面積を2050年までに100ヘクタールを目指す「みどりの食料システム戦略」は32条、地域で支え合うむらづくりを推進する農村型地域運営組織(農村RMO)なら35条などが当てはまるのではないでしょうか。
それぞれの詳細については衆議院のサイトを参照ください。
どんな変更が検討されているか
- IT技術など活用した成長産業化
- 輸出強化
- 環境負荷の少ない持続可能なシステムの確立
- 食料安全保障の強化
の4つを柱に検討を進めるということでした。
これから1年をかけて方向性を示すそうです。なにがどれくらい変わるか必見ですね。
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