日本の酪農家 9割が経営難~海外情勢やコロナが影響~

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円安、新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻などの外的要因に大きな影響を受けているのが酪農業。

牛の餌となる飼料の約7割を輸入しています。そのため戦争による飼料価格の高騰や円安などの影響を大きく受けて、生産コストが大きく上がっています。

その上、副収入となる子牛の肉用牛としての販売も低迷しており、収入が大きく減少しています。

酪農家の9割が経営難を感じ、直近1か月の経営状況は「赤字」が6割。このままの状況が続くと、5割以上が継続できないという環境にさらされています。

一般社団法人中央酪農会議が公表した「日本の酪農経営 実態調査」※を参考に、酪農家の経営状況を探っていきたいと思います。

・生産費高騰に関してはこちら

飼料・肥料 生産資材高騰 農産物価格に転嫁できてる? | うまいもん事典 (msy272.com)

・なぜ乳製品は値上がりするのか

11月から牛乳が値上げ!生産量が足りないの? | うまいもん事典 (msy272.com)

酪農の経営環境、9割が経営難

  • 「過去1年間で、酪農経営に困難を感じたことがあるか」という問いに対し「感じた」か「感じない」で回答。

「感じた」と回答する酪農家が92・4%とほぼすべての農家が苦しんでいます

とりわけ大きな影響を与えているのが、牛の餌となる飼料の高騰。経営コストのうち北海道が41%、都府県48%(2020年、農水省のデータより)を飼料費が占めるため打撃が大きくなってます。

値上げ幅も異常です。

7月の飼料全体の物価指数は146でした。前月比10・5、前年同月比で20・3%上がっています

配合飼料に限ると147です。前年比11・6%、前年同月比20%上がりました。

配合飼料を個別で見ると、

品目指数前年比前年同月比
成鶏用143.911.620.0
ブロイラー用(後期)150.212.020.8
幼豚育成用152.011.521.5
若豚育成用153.113.022.6
乳用牛飼育用145.611.722.4
肉用牛肥育用142.89.817.6
2020年を100とした物価指数です。



「生産資材高騰と農産物価格の乖離(かいり) パート2」うまいもん事典https://msy272.com/%e7%94%9f%e7%94%a3%e8%b3%87%e6%9d%90%e9%ab%98%e9%a8%b0%e3%81%a8%e8%be%b2%e7%94%a3%e7%89%a9%e4%be%a1%e6%a0%bc%e3%81%ae%e4%b9%96%e9%9b%a2%e3%81%8b%e3%81%84%e3%82%8a%e3%80%80%e3%83%91%e3%83%bc%e3%83%88-2/
  • 直近1カ月の牧場の経営について、「赤字」か「黒字」で回答。
n=197

赤字が65・5%で最も多くなっています。

この環境が続くと、55・8%が「営農を続けられない」と答えています。当然、生産することで赤字が続くようであれば継続できません。

  • 経営悪化の要因について(複数回答)

生乳の販売と牛販売の収入が減少

  • 酪農を経営する上、減少していると感じる収入について複数回答。

最も収入の減少を感じているのは牛の販売の減少(67%)

牛乳やチーズなどの原料になる「生乳」を販売している酪農家が「牛の販売?」と疑問に思われるかもしれません。仕組みを説明します。

搾乳するためには、子どもを産む必要があります。(人間でも同じですね)

つける種によって、乳牛に使う「メス」と肉用に販売する「オス」もしくは和牛と掛け合わせた「交雑種(F1)」が生まれます。生乳を増産したければ「メス」を、販売で収入を得たければ「オス」か「交雑種」を選択します。つまり、生乳を作るために生まれてきた子牛が販売へ回るということです。

子牛は、育成農家へ販売。そこで10カ月前後まで育てられ、肥育農家で肉用牛へと成長します。スーパーで国産牛と書かれた肉は、ホルスタインのオスか交雑種です。

食肉として流通するまで

酪農家同様に畜産農家も飼料高騰の影響を受けており、新たに飼育する余裕がないとして全国の家畜市場で子牛の買い控えが起きています。

独立行政法人農畜産業振興機構「肉用子牛取引情報」を基に作成

ホルスタインのオスはおおよそ10万円前後が相場ですが、2020年7月は7万4406円、8月は3万1436円、9月は1万5575円と大幅に下落しています

経営悪化で、将来への投資減・貯金の切り崩し

  • 経営悪化による具体的な影響について複数回答。

最も影響しているのが、将来に向けた牧場への投資(67%)、次いで貯金の切り崩し(66.5%)、家族の生活費の切り下げ(47.7%)となっています。

ホクレンが公表する家畜市場集計表によると、すでに妊娠しており、搾乳牛になる「初妊牛」の市場価格は低迷しています。経営が厳しいことで、酪農家の生産・投資意欲の減退が続いています

乳牛市場のデータを基に作成

2022年4月の平均価格は59万円と、前年同月比で25%安。

22年10月は45万5000円と下落が続き、同24%安となっています。21年4月比では42%安となっています。

※「日本の酪農経営 実態調査」

国内の酪農家197人に対して、2022年6月9日~6月14日の期間でアンケート調査を実施した。

この記事を書いた人

農業界に一石を投じようと、脱サラした20代。
「産地統一」という無謀すぎる目標を掲げて産地に乗り込む。
地域おこし協力隊という制度の元、研修中。2025年10月からの独立に向けて栽培技術・経営を学ぶ。
理解=説明可能
アウトプットの場としてブログを書いています。

※イニシャルDに登場する「PROJECT.D」のオマージュです。

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