農業生産資材の高騰が続く中、農産物の価格は上がっていません。と言いたいところですが品目によって状況が異なります。資材が高くて大変なのは皆さん同じなのですが・・・
食品メーカーなどは「原材料の高騰」を理由にさまざまな商品の値上げをしていますが、農産物は逆に下がる品目があったり、伸びていたりさまざまです。ただ、資材高騰の影響ではなく、需要の浮き沈みの関係で価格が伸びているという見方が正しいと思います。
つまり、市場出荷の場合は資材高騰分は転嫁できていません。
農水省が発表した農業物統計調査「農業物価指数(令和4年7月)」※を基に、生産資材と農産物の物価指数をパート1、2にわけてみていきます。
パート1は野菜の物価指数です。ウエイトの高い品目をピックアップしています。
農産物物価指数(農産物総合)
下記が、2020年を軸(100)にした農産物物価指数の推移です。

農産物は天候に影響されるため、波はありますが100前後で推移しています。
2020年から価格はほとんど変わっていません。
次からは品目ごとに物価指数をていきます。
米は大きく下落

米は概算金といって、事前に価格が決められるため一年を通して同じ価格帯で推移します。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、業務用需要が停滞しました。
供給が需要を上回った状態のため、近年は特に下げトレンドが続いています。今後、消費が反転拡大することは見込めないと思います。2021年産の在庫がかさんでいるようです。
実際にあるスーパーでは茨城県産の米が5キロ1000円なんてのもありました。九州から続々と今年の新米の販売が始まりましたが、そちらも安くなっていました。
サツマイモは成長中

サツマイモは右肩上がりに推移しています。
価格上昇の背景には、焼き芋ブームがあります。
最近、焼き芋の専門店やスーパーの焼き芋機などが増えています。茨城県行方市にあるJAなめがたしおさいの甘藷(かんしょ)部会連絡会が火付け役となり、焼き芋ブームが到来しました。
最近は夏にも冷やし焼き芋としてコンビニなどで販売されています。そのほか、ケーキやアイスなどの加工品も増えています。
秋、冬に「や~きいも、いしや~きいも」と巡回する移動販売車から買うイメージでしたが、最近は見かけない気がします。
このように年間を通した需要が活性化したことで相場が上がっており、それが物価指数に影響していると考えられます。
家庭需要が根強いジャガイモ

マクドナルドや冷凍食品などのポテトは輸入ですが、スーパーに並ぶジャガイモはほとんど国産です。
長期的にみて生産者や栽培面積が減少する中、新型コロナウイルスの感染拡大で自宅での食事が増えました。カレーやサラダなど使いやすく、貯蔵性が高いことから消費が活発になりました。
21年は天候不順で数量が少なめだったことも背景にあります。
果菜

今回の統計における果菜にはスイカ、トマト、キュウリ、スイートコーン、ナスなどを指します。
全体的にみると、やや下降気味です。
葉茎菜

葉茎菜に含まれるのは、キャベツ、ネギ、レタス、タマネギ、アスパラガスなどです。
大きな傾向としては価格は上がっていないです。
ただ、21年終盤から22年にかけてタマネギが高騰していました。物価指標では、2022年4月が319、5月が291、6月239、7月が189と基準を大きく上回っています。葉茎類の中で4番目にウエイトが高いです。
北海道産が出回る時期ですが、天候不順で数量が2~3割減で、価格は高騰。平年に比べて価格が2~3倍になる時期もあったようです。
※農業物価統計調査「農業物価指数」
品目ごとに出荷量が多いなど価格形成に主導権を持つ出荷団体などを対象に、野菜なら毎月5日、15日現在、野菜以外は毎月15日に調査。「令和4年7月」は、農産物生産者価格調査が1210(回答数は1170、96.7%)、農業生産資材価格調査が1341(回答数1321、98.5%)だった。
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