農業産出額の推移~全体、米、野菜、果実を展望する~

ホーム

「農業は高齢化して、後継者不足で衰退している」

そんなイメージが先行していると思いますが、実はそんなことはないのが農業です。(確かに農業者人口は減少しています)

今回取り上げる農業産出額を見ていただけらば、何となく「あれ?意外と農業って頑張ってるな」と感じていただけると思います。

農水省が公表した「令和3年 農業産出額及び生産農業所得」を参考に、農業全体・品目ごとの農業産出額の推移をみていきたいと思います。

1955年~2021年までの推移です。

農業全体

グラフの数値は1年ごとで取っています。

農業人口は右肩下がりですが、産出額は違った動きをしていることがわかります。何となく農業のイメージ変わりませんか?

21年の農業産出額は8兆8384億円です。農水省が5年ごとに公表する「農林業センサス」によると、20年の農業従事者※は152万人。単純計算で一人当たり581万4736円。家族経営や法人などの経営体を無視した単純計算に意味はあるのかという疑問はありますが参考です。ちなみに、国税庁の調査では、21年のサラリーマンの平均年収は443万円です。

農業は「清く貧しく」みたいなイメージがあるかもしれませんが、そんなことはないです。もし仮にそうだとしたら誰もやりません。(最近はそのイメージを商売に活用する輩が増えていますが)

最も農業算出額が大きかったのは、1984年の11兆7171億円。同年と比べると、2021年の産出額は25%減。ただ、「農林業センサス」によると1985年は346万人と、今の倍以上がいます。人数が半分に減っても、農業産出額は25%減。これを見ると、昔に比べて効率よく生産できるようになっているようです。

人口の減少が進むため、国内マーケットは縮小傾向です。そのため、国内だけを見るならば、基本的に農産物は飽和状態。市場価格が上がらないことが物語っています。最近は生産資材が高騰したことで、農産物の「適正価格」が話題ですね。

効率よく生産できる→でも、国内マーケットは縮小

つまり、農業者の人口減少は、「日本国民の需要を満たすだけであれば大きな問題ではない」ということです。ただし、高齢化は大きな問題です。平均年齢は66・7歳。長くて10年くらいと考えると、恐ろしい。

※農業従事者

1985年から、経営耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の販売農家の人数を農業従事者として算出。

パン、麺の普及で米は苦戦

米は右肩下がり。

2021年の産出額は1兆3699億円。最も多かった1984年と比べると65%減少してます。麺やパンの普及などで需要が低迷しています。

特に、人口の多い中高年の米離れが考えられています。NHKの「コメ余り!?なぜ?どうする?」によると、2001年の20歳を基準(100)とした場合に、15~19歳は120で横ばい、20代もおおよそ100で推移しており、消費量は減っていません。一方、60代、70代になると右肩下がりで、10%以上減少しています。

確かに私の祖父母もパンが好きで、「明日の朝のパン」を毎日気にしてます(笑)若い世代以上にパンが好きなのではないでしょうか。田舎のオシャレパン屋が流行る理由がうなずけます。

野菜

2021年、野菜の農業産出額は2兆1467億円。最も多かった1991年(2兆8005億円)と比較すると、24%減少しています。

基本的に、野菜は国内マーケットの縮小に連動します。

それは、輸出という形で市場を広げづらいからです。なぜかというと、輸送コストによって現地で「超高級野菜」となってしまうからです。仮に輸出するとした場合に、なるべく輸送費を抑えるためには船便が必須です。しかし、葉物野菜や軟弱野菜は長時間輸送に耐えられません。実際に、サツマイモや長芋などは輸出していますが、限定的です。

そんな中、国内でブロッコリーが流行したり、若者の間でサツマイモが人気になったりと、野菜はブームもあるので難しい品目だと私は感じています。

じゃあ野菜はどう生き残るのがいいのか。

まだ、国内にも需要はあります。それは加工・業務需要です。

一般家庭用の生鮮野菜は、ほぼすべてが国産。一方、加工・業務用は3割を輸入に頼っている現状です。加工・業務需要は今後も拡大が見込まれるため、こちらへの供給をいかにしていくかも考える必要がありそうです。

果実

2009年以降、右肩上がりです

2021年、果実の産出額は9159億円。最も高かった1992年(1兆1025億円)と比べると17%減。

果実が伸びる理由は、生産者減によって単価が上がったこと、高単価商材が増えたこと、輸出できることの3点です。

果実は嗜好品であるため、高くても買いたいニーズがあることが強みです。そのため、市場価格が多少上がっても問題になりません。

また、新しい品種も増えました。「シャインマスカット」やかんきつ「紅まどんな」など、単価は高いですがよく売れています。その他、サクランボ、ブドウ、イチゴなど高単価を狙える品種がたくさんあります。品種開発は「糖度」「高単価」を狙って育成しているようです。

輸出できることも大きな特徴です。

野菜だと高単価になってしまうと受け入れられませんが、嗜好品の果実なら海外の富裕層にニーズがあります。ただ、最近は格安の韓国産の出回りが増えているため、厳しい側面もあるようです。輸出を継続していくには、「どうやって現地でのコストパフォーマンスを上げていけるか」が課題になると考えられます。価格競争に乗るわけではありません。

余談ですが、

韓国はマーケット調査もせず、日本の後追いで販売をしていきます。ある輸出業者が、試しに何も考えず適当に販売していたら韓国の業者も同じものを持ってきたという話を聞いたことがあります。

この記事を書いた人

農業界に一石を投じようと、脱サラした20代。
「産地統一」という無謀すぎる目標を掲げて産地に乗り込む。
地域おこし協力隊という制度の元、研修中。2025年10月からの独立に向けて栽培技術・経営を学ぶ。
理解=説明可能
アウトプットの場としてブログを書いています。

※イニシャルDに登場する「PROJECT.D」のオマージュです。

ふなつまさやをフォローする
ホーム農業概況
ふなつまさやをフォローする
PROJECT.S~梨産地の統一を目指す若者~

コメント

タイトルとURLをコピーしました