今回は農業産出額の畜産・酪農編を見ていきます。
「強い農業」というと大規模な農業や、ITを駆使したスマート農業を思い浮かべる方も多いかもしれません。
私は「畜産」が強い農業の代表格では?と思っています。理由は単純。儲かっていて楽しそうな人が多いから(笑)
次の項から見ていく産出額の長期推移でも一目瞭然。
他の品目は「ピーク時に比べ…」ですが、畜産のピークはまだこれからだな、と思わされます。
肉用牛
和牛や、和牛とホルスタインをかけ合わせた交雑牛といった、肉用に育てられる牛の総称です。
2012年以降に大きく伸び、2021年に過去最高を更新しました。
肉用牛をけん引するのが黒毛和牛。コロナ前まで輸出やインバウンド需要で高値相場が続き、生産も拡大しています。今後も頭数は増加していく見込みです。
サシの入った和牛は日本ならではの牛肉で、輸出も好調。まさに「強い農業」を実現しています。
豚
豚は1970・80年代のピーク時に比べると減っていますが、かなり堅調です。国内の豚肉消費量は増加してます。
ただ、豚肉は輸入品との差別化が難しいとされる食肉。
そのため、増加した消費分は安価な輸入品に需要を奪われています。輸入量は、この30年で倍増しています。
鶏肉(ブロイラー)
鶏肉は食肉の中で唯一、輸入よりも国産の比率が高い肉です。
産出額はこの10年は上昇傾向にあります。
企業的な経営体が多く、一戸あたりの飼養羽数が多いのも特徴。
ほぼ契約出荷なので、相場には左右されにくいといえるかもしれません。
鶏卵
鶏卵は数少ない国産ほぼ100%品目。加工用の一部の液卵を除き、国内で流通している卵は国内で生産されています。
産出額は増減を繰り返しつつも、ほぼ同水準で推移。
最近は飼料高騰や鳥インフルエンザの影響が心配されていますが、毎日安定した量を食卓に届け続けてくれています。
鶏肉同様、鶏卵も企業的経営体が多いです。
生乳
生乳も、数少ない国産100%品目。
1970年代にどかんと伸び、その後は高水準で推移しています。
2014年のバター不足騒動以降、国が音頭をとって増産体制を敷いたため、ここ数年は増産基調で推移。2020年には過去最高産出額を更新しました。
ようやく増えたところでコロナ禍に見舞われ、今は生乳余りが課題になっています。
誰のせいでもないことではありますが、飼料高もあり酪農家はこれまでにない厳しい状況にさらされています。22年には、牛の頭数を減らすことに助成金を出す動きもありました。
離農する方も増え、今後はまた生乳不足となるのでしょうか。
コメント