大手乳業メーカーが11月から牛乳の値上げをはじめました。
値上げの背景にあるのが、牛の餌代や光熱費などの高騰です。世界的な飼料需要の高まりなどで牛の餌となるトウモロコシや牧草などの値段が高騰し、酪農家の経営は過去にないほど悪化しています。
全国の酪農家の団体でつくる中央酪農会議の調査では、約6割もの酪農家が赤字に陥っているという結果が出ました(2022年6月時点)。
「このままでは日本の酪農がなくなってしまう」。そんな危機感から、生乳の引き取り手となる乳業メーカーが、酪農家から買い取る生乳(牛乳になる前の原料乳)の価格を11月から引き上げました。
それを受け、牛乳やヨーグルトなどの製品価格も11月以降順次値上げしていくことになったのです。
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酪農家の9割が経営に危機感 5割は廃業?~円安、ロシア・ウクライナ侵攻やコロナ渦が影響~ | うまいもん事典 (msy272.com)
生産量は減っているの?
生乳の生産量はここ数年増加傾向にあり、2022年度も昨年を上回る見込みです。一方で、消費量は長引く新型コロナウイルスの影響や、家庭消費の減退などで低迷しています。
生産コストが上がって、消費量も落ち込んでいるのなら生産量を減らせばいいのに、と思う方も多いかもしれません。
ただ、生き物である牛から絞る牛乳は、工業製品のように生産量を自在にコントロールすることはできません。
牛が生まれ、牛乳を搾れるようになるまでには最低でも3年はかかります。搾れるようになってからは、毎日絞ってあげないと、乳房炎という病気にかかってしまうため、いきなり止めることもできません。
蛇口をひねるとすぐに出てくる水と違い、牛乳は生き物である牛からいただいているという特性上、需給のバランスを取るのが非常に難しいのです。
酪農家が減るとどうなるの?
2014年にあったバター不足を覚えているでしょうか。
あの混乱も、発端は「平成の酪農危機」といわれる生産コストの高騰で、酪農家の数が減ったことでした。
酪農家の数が減り、生産量が徐々に少なくなっていった結果、需要量が生産量を上回り、バターに加工する分の生乳が足りなくなってしまったのです。
現在の酪農危機は、平成のものよりも深刻といわれています。
酪農家の減少や牛の頭数を減らすなどして生産能力が低下した場合、生産量を戻すのは容易ではありません。
酪農家を応援するには?
昨年の年末には、牛乳の大量廃棄の危機が大きな話題となり、「応援消費」の輪が広がりました。
今年は、昨年よりも廃棄の可能性が高まっているとの見方もあり、消費量をいかに増やせるかが重要な局面となっています。
牛乳は、ただ飲むだけではなく、いろいろな料理に活用できる魅力もあります。
水の代わりに牛乳を入れることで、味がまろやかになったり、味にこくが出る分、塩分を控えめにしたりできるうれしいメリットもあります。
パスタやシチューなどの定番メニューだけでなく、ミルク豚汁やミルクカレーうどんなど、あらゆる料理に活用できます。
鍋との相性もばっちりなので、今年の冬はミルク鍋であたたまってみてはいかがでしょうか。
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